キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
「りっちゃん」

向き直った彼にあたしも倣う。
上着の内ポケットから、掌サイズのジュエリーケースをおもむろに取り出し、ミチルさんがあたしの左手を取った。そして二つの指輪のうち、小さい方を薬指の付け根に滑らせる。

もう片方を、あたしがミチルさんの薬指に嵌め。視線を深く合わせてから、目を閉じた。
お兄ちゃんの前で交わす口付けは。何に捧げるより神聖だった。


柔らかい風と一緒に、そっと胸元に抱き寄せられて、縋るようにあたしも顔を埋めた。

「・・・隆弘に誓ったんだよ」

頭上に囁かれた、少し低めの響き。

「あいつが自分の命より大事にしてたものを守る為に、僕はいるってことを」
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