キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
天辺に吐息が押し当てられ、あたしの肩を抱く指に一瞬、力が籠もった。
顔を上げると。ミチルさんの眼差しは真っ直ぐ、お兄ちゃんのお墓を貫いていた。

「あの日から忘れたことは無いし、これからも忘れない。・・・お前の代わりを必ず果たすから。りっちゃんを僕にくれないか、隆弘」

語りかける声の深さに、心臓が掴まれてきゅっとなる。

「信じて欲しい、僕を」

「お兄ちゃん・・・っ」

その言葉に、思わずあたしの口からも飛び出してた。
志室家って彫られた黒いその墓標は、黙って返事をした。

「あたし達のことなら、なんにも心配いらないからねっ? ミチルさんには甘えてばっかりだけど、これからは少しでも頼りにしてもらえるように頑張る。・・・大丈夫、あたしもミチルさんも、二人でなら生きていける。だからお兄ちゃんは、のんびり昼寝でもしててよ・・・っ」

言っててちょっとだけ泣きそうだったけど。最後は笑って、思ったままをお兄ちゃんに云えた。
安心してよ、って。一番はそれだけだった。


『俺をのけモンにしてんじゃねーよ!』

ああ?って、しかめっ面で不貞腐れてるかな。

『利津が決めたことなら、俺は口出しはしねぇ。けどなぁ、間違ってる時は殴ってでも止めるからなぁ、憶えとけ?』

誤魔化しで嘘吐いたり、悪いのに謝らない時は、遠慮なく脳天にげんこつだったもんね。

『昔っから満が好きだったもんなぁ、利津は』

頭を掻きながら、やれやれって。
困ったみたいにお兄ちゃんが笑った。・・・気がした。
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