キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
テレビのニュースでも、ときどき耳にする。櫻秀会も秋津組も、大きくて有名な暴力団組織。その名前がミチルさんの口から出たのが、ひどく不似合いで。驚いたって言うより、茫然としてる。

「・・・本気で言ってるのか」

厳しい顔付きをした淳人さんの眼差しが一層、剣呑さを増す。
ミチルさんは動じた様子もなく淡々と答えた。

「養父(ちち)とは違うんだよ。櫻秀会に偏るつもりもない、ビジネスとしてしか考えてないからね。たとえお前でも、事と次第によっては潰すよ。僕の邪魔をするなら」

「リツをそっち側に道連れにして、・・・それで満足か。お前」

「・・・・・・それで守れるなら、安いものだろう」

意味が分からない、二人の間の冷たい不穏なやり取りは、あたしのキャパをあっけなく超え。思考回路が軋んだイヤな音を立ててた。

ミチルさんが。極道の淳人さんより立場が上に聴こえる。
ビジネスって。一体なんのこと・・・?

自分を必死に奮い立たせてないと、今にも足許から崩れてっちゃう。
混乱して。どうしたら。

石みたいに固まってるあたしの耳に、ミチルさんの声がたわんで聴こえた。


「隆弘を利用した代償を払わせて、りっちゃんには傷一つ付けさせない。あいつが死んだ時から、そうすると決めてたことだ」
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