キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
ミチルさんと繋がってる手に力が籠ってて、じんじんと痛みが脈打ってた。
気が付いたら、心臓もどこもかしこも。締め付けられたみたいで苦しい。
脳内の酸素が薄くて、喘ぐようにあたしは息を吐く。

ヒールの足を踏ん張り、肩で大きく。そして。
横に立つミチルさんをもう一度、仰いだ。

いつもの柔らかさも、薫るような微笑みも消えた顔。
ただ揺らぎのない眸がこっちに傾いて、あたしを貫いた。

「・・・ごめん、りっちゃん」

静かで密やかな声が、降り注ぐ。

「僕は一生黙って、何も言わないつもりだったよ」

それを責めないって言ったのは、あたし。
小さな棘が刺さったような胸の痛みを押し隠して、目を合わせ続ける。

「りっちゃんは、僕と同じものを見なくていいんだ」

ミチルさんは深く息するように言った。

「何に代えても僕が守る。隆弘との思い出を大事に仕舞って、籠の中で無邪気に笑ってて欲しい、りっちゃんには。だから訊かないでくれないか。淳人が言ったことを、どうしても話せと言うなら僕は答える。でもその時は」

哀しそうに歪んだ眼差しで淡く微笑みながら。

「僕と一緒にどこまでも堕ちて、天国の隆弘には二度と会えないよ」

心臓の上から突き立てられた刃。


ミチルさんがあたしに迫る選択はいつも。ゼロか百だった。
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