キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
「行こう」と肩を抱かれたまま、やんわりミチルさんに促され、あたしは咄嗟に淳人さんに声を掛ける。

「淳人さん・・・! お兄ちゃんもあたしも、二人とも大事で失くしたくないって思ってるから・・・っ」

「・・・ああ。分かっている」

「いつも心配してくれて・・・ありがとう、ございます」

睫毛を伏せ、あたしは心から言った。今はそれが精一杯。

ミチルさんと彼がどうしても相容れないのは、お互いが抱えてる何か深いしがらみに関係があるんだと、ようやく気が付いた。
簡単に折ることも曲げることも出来ない、そういうナニか。いちばん歯痒く思ってるのは二人なのかも知れない。ふと思う。

いつか、どんなカタチでか、淳人さんにもちゃんと返したい。
見守ってくれてる、たゆみない愛情に応えて。

「菅谷はどうでも、リツの道を外させないのが俺の役目だからな」

上から目を細め、息を吐きながら威圧的な彼。

「お前の為なら、どんなに恨まれようが菅谷から引き離して、一生俺から逃さんぞ」

あたしはその本気を受け止めて、小さく微笑んでみせた。

「・・・淳人さんをそんな風に思いたくないから、あたしは、自分とミチルさんを信じます」

一瞬、視線が固まって。それから苦そうに口の端を歪めたのが映った。

「・・・全く、お前は」



呟きを漏らした淳人さんは、意思を秘めた横目を流して背を向けると、そのまま何も云わずにお墓の方に向かって歩き出す。
後ろ姿をしばらく見送り、あたしはミチルさんを見上げた。
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