キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
目が合って。ミチルさんから寄せられた吐息が唇に重なった。
一度離れて、もう一度。まるで恋人とするみたいに切れ間なく。
夜にするのとも違う、どこか欲しがられて、求められるキス。
惑いながら応えた。不器用に。




「・・・僕は。隆弘に一緒に堕ちて欲しかったんだよ」

そっとあたしを離したミチルさんの綺麗な貌が、儚げに歪む。

「僕が止めてやるべきだったのに、あいつが望んだことだって自分に言い訳をして、止めなかった。・・・これで隆弘が僕から離れないことが嬉しかった。そういう自分勝手な男なんだよ・・・」

自嘲の色を濃く滲ませた、崩れそうな微笑み。

「そのうえ今度は、りっちゃんが僕と堕ちてくれるのを心の隅で喜んでる。淳人の方がよっぽど、りっちゃんを幸せにしてやれるのに・・・僕のものにして繋いだ。りっちゃんまで失いたくなくて、どうしても手放してやれない。最低な卑怯者だよ」

清風がワンピースドレスの裾を躍らせ、足許をすり抜けてく。
仄かな花の香を連れて。
お兄ちゃんが眠る大地を渡ってく。


悲しくて辛いときほど、ミチルさんは。・・・・・・笑う。
いつも。
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