キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
胸に痛みを憶えながら。 眸の奥を揺らす彼の、少し低い静かな声を耳の奥に刻む。

「僕はりっちゃんに、僕以外の誰かを選ばせる自由をあげなかった。優しいフリで、りっちゃんがどこにも行けないように。・・・隆弘には、“こっち側”を選べる自由を残して、道を完全に塞いでおかなかった。あいつが何をどう選ぶか期待してたんだよ。隆弘ならって、・・・僕は」

ミチルさんの言葉は抽象的で、輪郭ははっきりと見えない。ただ。
懺悔というより。それをねじ伏せて、もっと強い決意みたいなものを秘めてるような。
自分の心臓に刃を突き立てたまま、血が流れ出るのも構わずに歩き続けると決めてる。ような。

僕は、って言った後にミチルさんはひとつ呼吸を逃した。

「・・・僕には二人が全てだよ。あの頃からずっと。その為に使える力が今の僕にはある。たとえそれがどんな色をしてても、りっちゃんには真っ白な世界だけを見せる。僕があげるものは、本物だって信じて傍にいて。・・・一緒に堕ちてくれるなら」

躊躇いのない切れ長の双眸が、あたしを見つめる。

『信じる』って、そういうこと。
前に彼が言った。黒を白に塗り替えてでもって。
ミチルさんの、・・・それが愛って呼べるものなら。

あたしは。セカイは白くて綺麗なんだ、って。

「・・・信じるよ。最後まで・・・」

それが。あたしの愛だから。
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