キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
お兄ちゃんは、これっぽちも気付いてなかった。・・・ミチルさんも絶対に、親友の一線を越える素振りは欠片も見せなかった。眼差しだけがいつも、焦がれるように包むように、優しくお兄ちゃんを見てた。

唐変木のお兄ちゃんが、付き合ってる彼女のノロケ話をミチルさんに聴かせても。オマエも彼女の一人くらい作れよ、って悪気なくせっついても。ずっと笑ってた。

傍でミチルさんを見てたから、あたしは気が付いてたよ、お兄ちゃん。
初恋の人だもん、そりゃあね。気が付かなくていいことまで、分かっちゃうんだから。

立ち昇るお線香の紫煙を辿って、空を仰いだ。薄日が差す曇天。
雨男と晴れ男の効果が半分半分、・・・てとこかな。


「・・・りっちゃん。寒くなってきたし、帰ろうか」

やんわりしたミチルさんの声に視線を戻すと、淡い微笑みが待ってる。

「お兄ちゃんと、話おわった?」

わざと悪戯っぽく。

「ん。・・・りっちゃんには僕がいるから、心配するなって言っておいた」

「頼りにしてます、ミチルさん」

小さく笑い合い。
お兄ちゃんに『またね』って挨拶して、お墓を後にした。



お兄ちゃん。
このまま一生、ミチルさんのココロを離さないままでいてよ?
他の誰にも渡さないで。

知らない誰かに奪られるくらいなら、お兄ちゃん一人を永遠に想ってて欲しい。
・・・・・・そんなワガママが神様に届いて、お兄ちゃんを連れてったのなら。


きっとこれは罰。
あたしの愛は、死ぬまで報われないって。・・・引き換えの罰。
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