キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
白いシャツにスーツはブルーグレー、濃色と淡色の斜めストライプのネクタイを締めた彼は、平均年齢40代中盤ていう社員さんの中では、際立って若い。それでも風格は、上に立つ人そのもので。空気がぴりりと引き締まった。
この間、お兄ちゃんのお墓参りで会った時より、髪型を少し崩し気味にしてた分、印象が和らいでる気もする。

てゆーか! え、これ、ドッキリじゃないよね?! こんな偶然てある?
だって本当に知らなかったんだけど~っ、ウソ、お兄ちゃん、どーしよ!
真面目にびっくりだよ! 帰ったらミチルさんに報告しなきゃ~っっ!

相変わらずの落ち着いたバリトンが「今年も成果を期待する」って締め括った声に、あたしも意識を現実に引き戻した。

奥に密談用の小さな応接室があって、店長と羽鳥さん、社長の三人が入ってったところで、お茶を運んで行った。
出来たら吉井さんにお願いしたかったけど、新人がそんなこと言えない。
変な緊張をしながらテーブルに茶托を並べ、ささっと引っ込みかけた時。

「新しく入った志室くん、だったか」

淳人さんに呼び止められて、顔も身体も固まった。

「あ、・・・はい」

「仕事は慣れたか?」

「少しずつ・・・ですが」

「志室さん、事務は手慣れてるから色々と助かってますよ」

あたしがかなり緊張してるように見えたのか、羽鳥さんが横から愛嬌よくフォローを入れてくれる。

「そうか。・・・これからも宜しく頼む」

「はい。頑張ります」

淳人さんの眼差しを受けながら、どうにか笑顔を取り繕って退散。


・・・・・・衝撃の再会に、ちょっと心臓が落ち着かない。
お兄ちゃんの友達ってだけで、別に何がどうってことはない。けど。
えーとあれだよね。極道さんだっていうのは、口が裂けても言えないトッ
プシークレット、・・・なはずだよね? 日本の法律的に。・・・・・・あはは。


< 38 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop