キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
淳人さんは20分ほどして帰って行き、社員さん達もほっとしたように肩から力を抜いていた。

「あー仕事初めってことで、社長が今日はこれで上がりにしていいそうだ。お疲れさん」

店長から唐突に6時退社が通達され、男性社員は閉店準備に取り掛かる中、帰っていいと言われた吉井さんとあたしは、更衣室で私服に着替え始める。
今日は、オフタートルニットにワイドパンツ、フード付きのダウンコート。自転車がこぎやすいのが前提だから、女子力より機能性重視なスタイルだ。

お先に失礼します、と挨拶して二人で会社を後にし、家が駅の向こう口の彼女とは改札前で別れた。
ちょうどホームに滑り込んできた電車に乗り、今日の夜ご飯は、ホッケとほうれん草のゴマ和えと、あと一品どうしようって考えてた。お豆腐を買って湯豆腐もしよっかな。冷蔵庫の中身を思い出して頭を捻りながら。
ミチルさんは、何時くらいに帰るかなって。

帰りの電車の中で思うことって、いつも変わらない。ご飯のメニューとミチルさんのこと。
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