キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
ミチルさんには。同居してから毎年、ネクタイをあげてる。スーツがオーダーなのも知ってるから、それなりのブランドもの。日頃の感謝と、・・・ほんのちょっぴり淡い想いを添えて『ありがとう』って。

渡した次の日は必ずプレゼントしたのを着けてくれるし、それだけで充分嬉しいのにホワイトデーには三倍返しくらいが来て、意味があるんだか無いんだか。

今度の休みは、百貨巡りでもしようかな。内心、浮き立ってくる。

「同居してる彼にも、何かあげてる?」

向かいから視線を傾げられて、即答すると。

「志室さん、その人のことすごく大切なのね」

優しい眼差しで吉井さんが笑った。
彼女にもそんな人がいる、どこか愛おしげな色で。
それは、羽鳥さんじゃない。・・・気がした。


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