キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
ミチルさんが帰って来たのは、10時を少し回った頃。
玄関の方でガチャリと音がした瞬間、勢いよくソファから立ち上がり、廊下に飛び出す。頭で考えるより先に躰が動いてるんだから、我ながらものすごい反射神経だと思う。ミチルさんに関してだけは。

「おかえりなさい、ミチルさん!」

「・・・ただいま、りっちゃん」

コートと鞄を片手に、スリッパに履き替えたスーツ姿のミチルさんは、やんわり笑むと出迎えたあたしの頭を撫でた。

「すぐ、ご飯できるからっ」

「うん。ありがとう」

お味噌汁の小鍋とフライパンに火を点け、ひじきは電子レンジで温め開始。
ダイニングテーブルに二人分の用意を始める。

二階に上がってたミチルさんがリビングに戻ったのを背中で聴き、お味噌汁をお椀によそい、炊飯器からご飯をお茶碗に盛る。
生姜醤油が焼ける香ばしい匂いも、フタをしたフライパンから漏れてきてた。

「りっちゃん、まだ食べてなかったの」

驚いたような声がして、振り返らずに手を動かしながら、わざと軽く受け流す。

「んー、やっぱり一人だと味気ないしー。ミチルさんの顔見て食べる方が美味しい・・・ッ?!」

おいしいし。
って、言い終わらない内に。後ろから抱き込まれて、あたしの頭の天辺にミチルさんが顔を埋めてた。
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