キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
「お目当てのものは買えた?」

スムーズに車を発進させたミチルさんが、ルームミラー越しに後部シートの紙袋をちらっと見やった。

「うん。百貨店、ふたつ回って。電話くれた時、ほんとにタイミングばっちりだったから、驚いちゃった」

「僕もダメ元で掛けたからね。捕まえられて良かったよ」

二人で小さく笑い合う。

「それより何が食べたい? りっちゃんの好きなの、言って」

「うーんと、ミチルさんのおススメってある?」

「そうだねぇ・・・。僕は定食屋が多いけど、・・・そうだ、ランチが美味しい居酒屋があるんだよ。行ってみる?」

「行く!」

破顔して即答。


あたしの知らない、外でのミチルさんの一面が垣間見える。なんだか、一人で勝手にワクワクする。
スーツだって、今朝見送った時と同じなのに。違ったカッコよさに思えたり。仕事中ってフィルターを通して見てるだけで、新しい世界に遭遇できたくらい新鮮。

ハンドル握るミチルさんの、いつもより毅然として見えちゃう横顔を、そっと盗み見して。
シアワセを、じんわり噛みしめてた。

あたしの細胞って、全部ミチルさんで出来てるみたい。
だって心臓もどこもかしこも、ミチルさんが好きって。大合唱。

たとえば。世界中がミチルさんを『悪』だって罵っても。
彼がそれを貫きたいなら、どこまでも一緒に堕ちる。
赦されない罪でも。


お兄ちゃん。そのぐらい、あたしの恋は盲目なんだよ。・・・きっと一生。



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