キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
「・・・どうした。今日はやけに大人しすぎるな」

大きな電飾看板が目立つ量販店や、飲食店がぽつぽつ建ち並ぶ道路を走り抜けてく車。
静かな車内でふと、淳人さんが苦そうに笑みを滲ませこっちを見た。
さっきから訊かれたことに答えるだけで、自分からは口を閉ざしたままのあたしが訝しく思えたんだろう。

ミチルさんとの約束をどう話そうかと思いあぐねて、口が重くなってた。
淳人さんがどうでもいい人だったら、こんなに気が咎めない。極道さんだから、ってミチルさんの言うことも理解してるつもり。でも。
その前に淳人さんはお兄ちゃんの友達だから。・・・そう思うのはダメなの?

気持ちが揺らされる。

「・・・リツ?」

俯き加減に視線を逸らしたのを、さすがに今度は見逃してはもらえなかった。
手が伸びてきて、顎の下に指がかかる。上を向かされ、端正な顔立ちでじっと見据えられた。

「・・・・・・菅谷に何か言われたか」

言葉に詰まる。

「俺とは二度と会うな、・・・か?」

肯定。・・・だから何も答えられない。
淳人さんは少しの間黙って、静かに口を開く。

「お前もそうしたいなら」

真っ直ぐにあたしを射貫く眼差し。

「俺は二度と、お前の前には現れない。これが最後だ」

「・・・ッッ」


顔が歪んだ。嫌だって。声にならない声が弾けた。

会えなくなるのはイヤ。・・・嫌。

ミチルさんとは違うけど、淳人さんにも傍にいて欲しい。

ワガママ? でも。だって。

だけど。

ミチルさんとの約束。

あたしは。

どうしたら。

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