キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
4-4
置いた自転車を理由に、そのまま真っ直ぐ地元の駅で降ろしてもらうのをお願いした。
見慣れた街の光景が暗い窓越しに流れ映り、駅はもう間近い。
あたしをずっと片腕で胸元に抱き込んだままの淳人さんが、頭の上でふと言った。
「お前・・・、菅谷が志室に惚れてたのを知ってたんだな」
「・・・!」
まさか淳人さんの口から聴くとは思わずに、一瞬息を呑む。
「昔から菅谷のことしか見てなかったしな、リツは。気付いて当然か。当人くらいだ、疎かったのは」
顔を上げると、細めた眼差しであたしをじっと見つめてる。
「志室はよく俺に愚痴ってたぞ。お前と菅谷が一緒になってくれれば文句は無いってな。・・・今のお前達が、あいつの望み通りとは到底思えんが」
「・・・・・・淳人さん・・・」
「俺には、リツを真っ当に幸せにしてやる義務がある。志室の頼まれ事だからな。・・・菅谷がお前にとって毒でしかないなら、俺は俺のやり方で行くまでだ。それだけは憶えていろよ」
剛(つよ)い眼光が真っ直ぐに、あたしを射貫いて。
肯定も否定も出来なかったのを、どう自分に受け止めたらいいのか。
見渡したら、霧深い森に迷い込んでた。・・・ように。
駐輪場のそばで車を降り、テールランプが闇に紛れて見えなくなるまで、ぼんやり見送る。
またな、と淳人さんは間際に不敵に笑み、念を押すみたいに最後も深いキスを繋げてあたしを解放した。
指で自分の唇にそっと触れる。
濡れた口許が夜気にさらされて、冷やりと生々しい。
それでも。
あたしは。ミチルさんの鳥籠の中に還る。
これからも。・・・ずっと。
見慣れた街の光景が暗い窓越しに流れ映り、駅はもう間近い。
あたしをずっと片腕で胸元に抱き込んだままの淳人さんが、頭の上でふと言った。
「お前・・・、菅谷が志室に惚れてたのを知ってたんだな」
「・・・!」
まさか淳人さんの口から聴くとは思わずに、一瞬息を呑む。
「昔から菅谷のことしか見てなかったしな、リツは。気付いて当然か。当人くらいだ、疎かったのは」
顔を上げると、細めた眼差しであたしをじっと見つめてる。
「志室はよく俺に愚痴ってたぞ。お前と菅谷が一緒になってくれれば文句は無いってな。・・・今のお前達が、あいつの望み通りとは到底思えんが」
「・・・・・・淳人さん・・・」
「俺には、リツを真っ当に幸せにしてやる義務がある。志室の頼まれ事だからな。・・・菅谷がお前にとって毒でしかないなら、俺は俺のやり方で行くまでだ。それだけは憶えていろよ」
剛(つよ)い眼光が真っ直ぐに、あたしを射貫いて。
肯定も否定も出来なかったのを、どう自分に受け止めたらいいのか。
見渡したら、霧深い森に迷い込んでた。・・・ように。
駐輪場のそばで車を降り、テールランプが闇に紛れて見えなくなるまで、ぼんやり見送る。
またな、と淳人さんは間際に不敵に笑み、念を押すみたいに最後も深いキスを繋げてあたしを解放した。
指で自分の唇にそっと触れる。
濡れた口許が夜気にさらされて、冷やりと生々しい。
それでも。
あたしは。ミチルさんの鳥籠の中に還る。
これからも。・・・ずっと。