キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
5-1
「行ってくるね」

「行ってらっしゃい、ミチルさん」

黒いコートと鞄を手に、グレーのスーツを卒なく着こなしたミチルさんは、玄関先で極上の微笑みを浮かべ、見送りのあたしに柔らかなキスを落とす。
出勤時間は車のミチルさんの方が一時間以上、早い。

「りっちゃん、明日休みでしょう? 僕も早く帰れそうだから、夜はどこかに食べに行こうか」

「うん。じゃあ待ってる」

「何が食べたいか、考えておくこと」

「はーい」

にっこりと返したあたしのおでこに口付けると、ミチルさんは軽く手を上げ玄関ドアの向こうに消えた。

おかえりなさいのキスも、当たり前のように。
あの夜からミチルさんは、あたしを愛しい恋人みたいに甘やかす。

お風呂に入るのも一緒。眠る時もミチルさんのベッド。
毎晩のように求められて、躰を繋げ合う。
朝は。程よく筋肉が付いたわりと逞しい腕の中で、優しい笑みに起こされる。


あれは間違いなんかじゃない・・・って。証明してるかのように。
真摯に。誠実に。・・・・・・あたしを愛そうとしてくれてる。
“妹”のあたしを。





自分に嘘を吐きながら。
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