キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
電話応対も少なめで、業務以外の会話も無かった一日が終わり。
更衣室でスマホをチェックすると、ミチルさんからラインが入ってる。

“出先から直帰するから、会社に迎えに行くよ”

無意識に吐息が漏れた。 
今まで無かったようなことをしてくれる。特別扱いしてくれる。
真実(ほんとう)の恋人だったら。天にも昇る気持ちがしたのかな。
力無い笑みが零れ落ちた。

“外で待ってるから”

最後はそう締めくくってあった。
終わる時間はミチルさんも知ってるから、もう前の通りに車を停めて待ってるかも知れない。

“着替えたら出るね”

短く送信。すぐ既読になった。

ブラウスを脱ぎ、ドット柄でハイネックのワンピースに、ケーブルニットのボレロ風カーディガンを羽織る。会社用のビジネスパンプスからショートブーツに履き替えて、ダウンコートに腕を通し。

「お先に失礼します」

三人ほどいた営業さんに声をかけ、返事も待たずに裏口のドアノブに手をかけた。
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