キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
マンションと外塀の間の通路を抜け、表の通りに出たところで。移動距離ゼロ、白いC-HRのお尻がハザードを点滅させて停車してた。

「お疲れさま、りっちゃん」

あたしの荷物とコートを後部シートに置き、体勢を戻したミチルさんがにこりと微笑む。

「わざわざ迎えに来させちゃって、ごめんね?」

助手席に収まりシートベルトを嵌めながら、申し訳なさそうに言えば。

「僕とりっちゃんで、そういう遠慮はナシだからね」

頭をぽんぽんと撫でられて、ふっと涼し気な笑みが薫った。

ウィンカーを出し、静かにハンドルを切るミチルさん。
走り出してから、何が食べたいのかを訊かれて。
スーツの着崩れもない相変わらずのイケメンさんとなら、お洒落なイタリアンでも良かったんだけど。
何となく。お兄ちゃんの顔が浮かんで。

「・・・お好み焼き」

前は三人でもよく行ったっけ。
お兄ちゃん、屋台グルメが好きだった。
ミチルさんと二人で行ったことは一度もなかった。

「・・・・・・そう言えば、久しぶりだね」

淡く笑ったミチルさんの横顔が、どこか悲しそうに見えたのを。
あたしは見ないフリで、「そうだね」と小さく笑った。
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