キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
ミチルさんが連れて来てくれたのは、お兄ちゃんと行ったみたいな大衆食堂ぽいお好み焼き屋さんじゃなく。鉄板焼きも出来る、ダイニングレストランだった。
客層も学生やファミリーより、サラリーマンとかカップルが目に付く。どうやら、各テーブルでお店の人が焼いてもくれるらしい。黒いコックコートに赤のロングエプロン姿のスタッフが、忙しなく動き回ってた。

シックな色調で統一された店内は、落とした照明で落ち着いた雰囲気だ。オトナのお好み焼き屋さん。お行儀悪いお兄ちゃんには、ちょっと不向きかな。内心で苦笑い。
あたしは、もちチーズ玉。ミチルさんはエビイカ玉を選んでシェアすることにした。

混ぜた具材を、油を引いた鉄板に手際よく流し込むミチルさん。イケメンさんはヘラ持ってても何してても様になる。お兄ちゃんが持つと、どっか所帯持ちのオヤジ臭かったってゆーか。

あたしが思わずクスリと笑みを零したら、どうしたの?って視線がこっちに向く。

「なんかね。お兄ちゃんて、焼きモノ奉行だったなぁって」

「焼肉もバーベキューも、焼き方に拘りあったしね」

「ギョーザとかパンだって焼き色がどーのって、結構うるさかったよ?」

あたしが呆れて言うと、眸が弧を描いたミチルさんからクスクス笑いが返った。
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