ビロードの背中
“なんだかエロティック・・・。

私も彼と一度キスした。”


「・・・さっきの質問だけど。

・・・絵がね。いいの。」


それだけ言うと再びタバコを吸うだけで、黙ってしまった。


「・・・それが答えです。」

「・・・それが答えなの?」



「・・・情けない話なんだけど、俺、彼女との事にすごく影響される。

そんなバカなって自分でも思うんだけど、

スケッチブックを見ると、以前の絵とは全然違う。

彼女の精神状態が俺の中に入ってきちゃう感じ、って言えばいいのかな。

―― なんかうまく言えないんだけど。


・・・で、 絵を描くと絵の表情が躍動的で、

色彩も、簡単に言えば自分が描いたとは思えない絵になるの。

技術とか経験とかじゃなくて、その時のパワーのような。

本当に?って思うでしょ。

どう説明していいのか分からないんだけど、すごくいい絵が描けるの。」


彼女が彼に浸透して、絵ににじみ出る。

・・・そんな事あるのか――?

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