ビロードの背中
「頑張るってものとは違うと思うんだけど。

・・・あの日は俺が悪かったし。」


「私・・・、ダメなの。」


・・・私はついに泣いてしまった。

しかも鼻水まで心配しなければならないような大泣き。


彼は私に干していた風呂タオルを差し出した。

私は顔を覆ってしばらく泣いた。


“私は今まで――。”


もう後は、泣いた勢いで支離滅裂な不安や不満を彼にぶつけた。

彼はずっと聞いてくれた。

時折「そっか。」と言いながら。



泣くなんて久しぶり。

いつも我慢してきた。

我慢しなきゃならないと、立場や年齢を自分で決めてしまっていた。

“泣いてもいいんだ・・・。”

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