ビロードの背中
金曜日、会社の時計を見ると18:40だった。

定時はとっくに過ぎているが、いつもより早く帰れそうだ。


「係長、今日早いので飲みに行きましょうよ。」

20代の部下の女性達からのお誘いだった。

珍しい。

体調不良って事にして断ると、


「係長、考え込んでいるようなので、旅行の彼の事かなって話してたんですよ。

体調不良ですか?週から新プロジェクトですよ。

新チーフ張り切ってますから、係長も元気出して。」


「ありがとう。

――また誘って。」


“鋭い。確かに旅行の彼の事なんだけど。”


考え込んでいるのではない。

なんだか緊張して、ため息が出る。

昼食もなんにも味がしなかった・・・。



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