ビロードの背中
今日のように冷たい事務的な彼を、私は見たことが無い。


彼は見抜いている。

ロストヴァージンの為だけに、彼を利用することを――。


“こんなロストヴァージンでいいの?

・・でも戻りたくない。

戻りたくなければ、彼に従うしかない――。”



私がシャワーから出ると、彼が続けて入った。

「――少し寒いから、先にベッドに入ってていいよ。」


彼のシャツは長いけど、私の足はほとんど出ているので冷えてきた。

だからって・・

何だかベッドに入れない。


なんとなく、パソコンの椅子に座って彼を待っていた。



< 135 / 201 >

この作品をシェア

pagetop