ビロードの背中
彼は小さく悲鳴を上げた。

「どうしたの?」

彼はTシャツの背中部分をつまむと、少し持ち上げた。


「これ、私が昨日・・・。」


彼のきれいな背中に、桃色の濃淡のミミズ腫れの痕ができていた。


「痛いよね。

・・・ごめんね。」

「――ま、いいから。コーヒー入ったよ。」




久しぶりに彼の入れたコーヒーを飲む。


・・・あの時のまま、苦い。


コーヒーを飲みながら、何も話さない。



“――で、俺と姉さんはどうなる?”

・・・の解答を、私は出さない。

彼は、私を困らせるようなことは言わない・・・。



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