ビロードの背中
私は住吉に、単純に私のどこが好きなのか聞いた。

「顔が好みで、気が強いのに素直で可愛い。

仕事ができて、頭が良くて、ゴルフが上手。料理も美味しい。」




――以前、『彼』にも同じ事を聞いた。

彼は、テレてしまって、なかなか答えられなかった・・。

住吉は、私の目をまっすぐ見て答える。





目の前で米沢牛のステーキを焼いてくれるレストランに入った。

住吉は常連なのだろう。

料理人が肉を焼きながら、住吉にこう声を掛けた。



「住吉さんはいつも美人を連れてきてくれますね。」


“『いつも』・・・?”


「――うん。

・・・でも最後の美人になると思う。」


うっかり口を滑らせた、思いがけない料理人の余計な一言が

プロポーズのようになり・・・


2人で行ったゴルフから4ヶ月、住吉と私は2人だけの婚約をした。



20代の頃、あれほど憎んでいたゴルフがきっかけで・・。





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