ビロードの背中
「そんな、泣かないでよ。

――俺、そんなにお人好しじゃないから。

・・・ところで、結婚の決め手は?

俺じゃなくて婚約者・・・つーの?選んだのは?」


正直に話すべきか迷う。

・・・でも、もういい。


「・・・大人だから。」


彼は一瞬言葉を失ったように、唖然といった表情をしていた。


「・・・姉さん、きついな。


――大人って、何歳の人?」



「36歳。会社の取引先の人なの。」



「大人の男か――。

悔しいくらい、どうにもならない理由だね。」



彼も私も 2杯目をもらう。



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