ビロードの背中
彼は友達のバーテンダーを呼ぶ。

「モスコミュール、ふたつ――。」


友達が話しかける。

「お酒大丈夫?

本当にテイクアウトされちゃうよ。」


「いいからお前、仕事しろよ。」


単純に楽しそうだった。

大人の男には程遠いふざけっこが微笑ましかった。




「前から思ってたんだけど・・・、女性に手、早いよね。」



自分からもあるだろうが、彼ならナツホのように女性からの誘いも少なくないだろう。



「確かに遅くはない。

――って言うか、

俺、姉さんにはかなり誠実だったと思うよ。

 ・・・でもなぁ。」


彼の笑顔が真顔になる。

目がお酒のせいで少し潤んで、すがるような表情になる。



“・・・この目、見たことある。

男のくせに、なんて色っぽい眼をするんだろう・・・。”

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