ビロードの背中
「右の席のバイト君、今日いるかな。」

松永にほとんど強引に連れて行かれ、レンタルショップに入った。

彼は出勤している。


「――姉さん、何か借りましょ。

借りないとレジまで行けない。」

と、内緒話のトーンで話す。



結局、松永の希望により、松永の趣味のDVDをおごらされた。

松永がレジに並び、私はDVDを選ぶ振りをしていた。

松永と彼は次の客が並ぶまでしばらく話していた。



店を出てから

「バイト君、私の事、覚えててくれたみたいで、

『こんばんは』

って話しかけてくれたんですよ。」


“『こんばんは』は誰にでも言うでしょ。”


途中スーパーに寄って、ビールとポテトチップなどの

おつまみを買って帰った。

松永は家に付くまでずっと彼の話をしていた。




お風呂を出て、DVDを見ていたらメールが入った。


<後輩さんが、私の上司は男と旅行に行くのかもって言ってた。

俺とです、って言えばよかったかな。>




<バカ。>

と返信した。


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