ビロードの背中
テーブルに向かい合って座り、お茶を飲むと彼が深く息を吐いた。

「・・・部屋そのものが緊張するよね、この広さ。」


8畳の部屋に真っ黒の板の床の間。

そこに大きな花の生け込み。


座布団に上品な桜の柄のカバーがかぶせてある。

隣に6畳の部屋がもうひとつ。


「・・・誘ってよかったのかな?」


「こんな部屋、貴重な体験です。

・・・姉さん、混まないうちに風呂行かない?」


彼は、かばんから下着を出す。


“――えっ、

用意って・・・それだけ?”



私はまず、荷物そのものを隣の部屋に移し、

そこから、下着・化粧品・自分のシャンプー、浴衣まで袋に詰めた。

「――姉さん。

その袋って、風呂に何持ってくの。」

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