ビロードの背中
「・・・芸術家同士の話ね。

外見じゃないって言うけど、オフィスはスーツが正解かも。

よく社会人を心得てますね。」


「この間の臨時の仕事みたく、急できつい仕事も多いけど、やる気になるね。

・・・で、俺は憧れの姉さんにも、勇気出してみようって思ったの。

姉さんみたいな人と友達にもしもなれたら、

俺も強運がめぐって来るような気がして。

――まっ、俺の勇気はメールアドレスが精一杯だったけど。」


「・・・初めてメール交換した時は私も嬉しかった。

私・・・、モテないから。」


「・・姉さんは出来すぎちゃうのかな。

姉さん落とすの、難しそうだもの。

よっぽど男の方に自信がないと無理かな。

誰だって、アンタなんか相手にするわけないでしょ、って言われたくないし。

傷つくの怖いよ、男って・・・。」


「でも、彼女は勇気を出してあなたを落とした。

・・・髪まで切って、落とした。」


「――別に付き合ってるわけじゃないし。

彼女、自分の事全然話さないし。

・・大体、俺の事だって、どう思ってるのか。

俺の事も聞かないし・・・。」


「それでも一緒にいるのは、少なくともあなたは彼女が好きなんでしょ。

それとも・・・。 


”したい”から?」



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