12月の春、白い桜が降る。
でもある日、ようと同じ小学校だったクラスの男子から、
小学校の頃、山本さんにはずっとずっと好きな人がいるという話を聞いた。

私だけが聞いたんじゃなくて、そこにはようも一緒に聞いていた。

ようの顔はそこで明らかに変わった。

本人は変えてないつもりでいたんだろうけど、私にはわかった。

自分が心から愛している人に見放された時、どれほど冷酷で苦しいか、
だから、どうしてもそれが表情に隠しきれないこともよく知っている。

私も一度経験したことがあるから。

だから私は彼に目が惹かれて、自分と照らし合わせてずっと、ようにばかり構ってきた。
< 66 / 210 >

この作品をシェア

pagetop