12月の春、白い桜が降る。
帰りの電車で、お互い、何も話せなかった。

ようは表情をなくしたまま、窓の外の流れる景色を眺めていて、私は自分の膝を見ていた。

見ていたというか、ぼうっとしていた。

しかし、ようは、ようの最寄りより一つ後の、私の最寄り駅まで送ってくれた。

ここの駅はこの辺では珍しいほど田舎のような景色だ。

昔馴染みの商店街に、高いビルが無くてどこまでも広がって見える橙色の空。

少しずつ薄暗くなってきて、道の橋にある桜の木が淡々と並んでいる。

私はありがと、と呟いて自分家の方へ帰ろうとした。

その時ようが、私の名前を呼んだ。

その声は今にも消え失せそうで、切なくて、きっと顔を見なくても泣いていることが伝わってくる声だった。

ようはボロボロと涙を零し続けていた。

きっと涙は止まることを知っていなかったのだろう。

ようの目からは、流しても流しても涙が溢れる一方だった。

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