12月の春、白い桜が降る。
ドアを開けると、ようは眠っていた。

頭と腕には包帯が絡めており、酸素吸入用のマスクや管が沢山つけられていた。

その光景に私は目を疑った。
声すら出なかった。

名前を呼ぼうとした途端、横からひなたちゃん、と声がした。

驚いて振り向くと、いたのはようのお母さんだった。

何も考えずにいたせいで、気づかなかったようだ。

ようのお母さんはとても優しい表情をしていたが、濡れたまつ毛に赤い頬。

…泣いた後の顔だ。

誰が見ても一目瞭然だった。

「さっき、小型トラックとぶつかったの。
頭を打ったみたいだけど、さっきお医者さんが診てくれたら、

脳も心臓も影響がないから大丈夫だって。」

私は膝から崩れ落ちた。

その時やっと、顔が熱くなり、涙が溢れた。

その涙は冷たいものではなく、とても、温かいものだった。
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