12月の春、白い桜が降る。
理解が出来なかった。

記憶喪失ではないのだろうか?

私の記憶が、私だけの記憶が綺麗さっぱり失くなってしまったというのか…?

信じ難い話で、冗談かと本気で疑ったが、ようのお母さんが、

記憶が混乱してしまうから、会うのはもう少し待っていてほしいと医者から言われたらしく、

そんなお願いなんかされたら断ることが出来なかず

ように会うまで二ヶ月以上待つ事になった。

正直ほんとは直ぐにでも会いたくて仕方なかった。

胸が張り裂けそうだった。どうして、私の記憶だけ…。

でも、泣くのをぐっと堪えて、私はもう一度やり直すことを決意した。

ようがいなくなったわけじゃない。

一緒にいれば、また直ぐに思い出してくれる。

そう自分には言い聞かせたものの、やっぱりどうしても悲しさを抑えられなかった。
< 87 / 210 >

この作品をシェア

pagetop