〈BL〉あなたの隣、君の隣
第三話♤愛しい彼の側で
燿に抱いてもらえたから、やる気も気力も戻ったけど
あの二人をどうにかしなければならない。

僕の恋人を脅すとは(ニヤリ)

そうだ、父さんに連絡しなきゃね。

『〈もしもし、父さん?

燿は無事に連れ帰ったよ〉』

隣でまだスヤスヤと眠っている燿を
起こさないようにベッドから出てリビングに行き
父さんに電話を掛けた。

「〈よかったな〉」

寝室とリビングの間の柱に寄っ掛かりながら
いまだ起きて来ない燿に心の中で笑った。

抱かれるのは僕の方なのに
普段の体力は燿の方がない。

少々痛む腰を擦りなが、
この痛みさえ愛(いと)おしいと思った。

『〈ありがとう〉』

それだけ伝えると僕は
電話を切って夕飯の準備に取りかかった。

『おはよう』

一時間後、やっと耀が起きて来た。

『おはようございます』

夕方だけど、今起きたから挨拶は‘おはよう’だ(笑)

『躯、大丈夫ですか?』

クスッ。

『ちょっと痛いし怠(だる)いけど大丈夫だよ』

だってこの痛みは愛してもらった証拠だから。

『ほら、座ってご飯を食べよう』

家にある材料で作ったから簡単な物しかできなかった。

『相変わらず、あなたの作った物は
どれもこれも美味しそうですね♡*。

何時もありがとうございます』

有り合わせで作った簡単な物でも
耀は笑顔でお礼を言ってくる。

『買い物に行ってなかったから
簡単な物でごめんね』

謝ると頬にキスしてくれた。

『あなたが作ってくださるなら
私は夕飯がホットケーキ一枚でも構いませよ(クスッ)』

こういうところが燿だよな(苦笑)

『流石に君に出す、しかも夕飯を
ホットケーキ一枚ってことはないけど
そんな風に言ってもらえると気が楽になるよ』

『いただきます』

二人で手を合わせて食べ始めた。

この瞬間が幸福(しあわせ)だ。

✽+†+✽――✽+†+✽――✽+†+✽

翌日は一緒に出勤した。

燿がいてくれれば僕は怖いものなしだ。

「仲直りしたんだな」

二人で職員室に入ると年配の先生が
僕達を見てそんなことを言った(笑)

かなりの間、話さなかったから
喧嘩していたと思ったのだろう。

『えぇ、仲直りしました』

今回は年配教師の勘違いに
乗っからせてもらうことにしよう。

「何が原因かは知らないが
絵畑先生は目に見えて落ち込んでいたからなぁ」

ぁはは(苦笑)

『ご心配をおかけしました』

あの時は母親と従兄が燿を僕のことで
脅していたなんて知らなかったし、
想像すらしていなかったからね。

しかも、母親のことなんて
こう言ってはなんだけど、恋しいと
思ったことはなかったから忘れていたくらいだ。

さて、本当にどうするかな。

授業の用意をしながら、今後のことを考えていた。

とりあえず、耀は当分の間
僕の家に泊まらせよう。

一人にしたくないというより
僕が離れたくないだけなんだけどね(苦笑)

僕達は部活担当をしているわけじゃないから
比較的早く帰れる。

今日の夕飯は何がいいかな~

愛する人のために何かしてあげたいと
思える幸せを僕は燿と出会って初めて知った。

自分で言うのもどうかとも思うけど
一応、格好いい部類の容姿をしている。

学生時代も恋人がいなかったわけじゃないけど
長くは続かないとわかっていた。

僕に近づいてくるのは男女関係なく
“外見”しか見ない奴らばかりだった。 

外見しか見てない奴らは
勝手な理想を作り上げて
その通りじゃないとわかると
“がっかりした”とか“なんか違う”とか
理不尽なことを言ってきた。

そんな辟易としていた頃に燿に出会った。

思ったままを口に出す燿のことをよく思っていない人はいる。

聞きようによってはキツイと思う人も
無神経だと思う人もいるだろうけど
ストレートな物言いは裏表がないということ。

燿のそういう所に惹かれた。

出会って五年。恋人になって三年。

本当の僕を見てくれる燿を愛してる。

“情けないのもあなたの一部なんですから
恥じることなんてないんですよ”

そんなことを言ってくれたのは燿が初めてだった。

“私といる時くらいは
肩の力を抜いて甘えてください”

父さん以外に甘えられる人なんていないと思ってた。

昔の恋人達は僕に甘えてばかりで
甘えさせてくれなかったし、
ちょっとでも情けない部分を見せると
すぐに離れて行った。

ぬけてる所もあるけど
燿の側は安らげる場所だ。

奪おうなんて誰であろうと赦さない。
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