やさしくしないで ~なぜか、私。有能な上司に狙われてます~

タオルを軽く引っ張られる。
私は、タオルをぎゅっと握って抵抗する。
「こんなもの、いらないだろう?」クスクス笑いながら、彼との間を唯一隔てている布地を取り上げられた。

「よく、見せて?」
両腕を広げられ、上から課長にじっくり体を観察された。
「ここ、見て。あざになってるかも知れないよ」胸の谷間に視線を落として言う。
彼はそのまま、固い胸板を押し付けて来た。
壁に追いやられて、彼の体とぴったりくっついた。
身体を重ねた時の、肌の感じ。
首筋に感じる唇の感覚。
触れられる度にぞくぞくして、記憶が鮮明になってくる。
昨日、こんな風に何度もキスされたのだ。

私は、彼の首筋に腕を巻き付けて、キスに答えた。
昨日と同じく、身体が反応してしまった。
私は……
課長にキスされ、こうして体を重ねるのが嫌ではない。

なんて事……
私は、相手を間違えていた。
昨日の相手が岡先輩だと、信じて疑わなかった。
間違いだってわかってるのに。
濃密なキスを浴びせられ、意識が遠のきかけている。
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