やさしくしないで ~なぜか、私。有能な上司に狙われてます~
週が変わると、リフレッシュされるなんて言ってたのは誰だ?
課長の爆弾発言の影響は、今だって続いている。彼ったら、会議で席を外してこの場にいないのに。
ふてぶてししいほど冷静な課長の残像がちらつく。
はああ。体が重いし、節々が痛い。
彼は、私の部屋に置き土産を置いてって、堂々と忘れものしてくし。
『今度来た時、ひげ剃れないと困る』
『今度来る時って、なんですか?っていうより、いつそんなもん用意したんですか?』
『いつって、さっきスーパーに言った時。安ものだから気にするな』
『いえ、あの……そうじゃなくて。
あっ。止めて。ちょっと待って。だめです。
なに……するんですか……もう』
『こうしてキスする時、ひげが当たって痛いだろう?』
これって、もう付き合い始めてるってことになるのだろうか。
違う、違う。
付き合って下さいって言われてないし。課長は、私の上司だし。
ダメ。付き合ってなんかいない。
すぐに頭の中を訂正する。
私が好きなのは、岡先輩だ。課長にもきっぱり言わなきゃ。
今度は、町田課長と顔を合わせても、動揺することなんてない。
課長のキスは、頭から追い出す。
課長のこと思い出すのも止めよう。
反芻もダメだって。顔に出るから。
しないように心がけよう。