やさしくしないで ~なぜか、私。有能な上司に狙われてます~
岡先輩、屈託のない笑顔を私に向けてくれる。
もしかしたら。
送ってくれたのが、岡先輩だったらどうなってたのかな……
岡先輩だったら……
そんなこと考えても仕方ないけど。
もし私が、岡先輩と同じ方向だったら。
課長とあんなことになってなかったのは、確かだ。
「悪かった。実は、君ともう一人送って行かなきゃならないやつがいて。二人も送って行くのは無理だったんだ。
困ってたらその時ちょうど町田さんがいたから、つい町田さん頼っちゃったんだ」
「はあ」私は、深いため息をついた。
世の中、そんなものだ。
どうして、私はそのもう一人になれなかったのだ。
岡先輩、何で私を選らばなかったんですか?
いまさらながら、その選択が大きな差になってしまったんですよ?
岡先輩は、私の気持ちなどなにも知らずに、白い歯を見せて屈託なく笑った。
「でもさあ、町田さんなら、間違いないでしょう?」
「ん?」えっと、何の間違いですか?
「彼なら信頼がおけるし、酔っぱらってる女の子に手を出すようなことしないし」
酔っぱらってる女の子に、手を出すようなことはないし。
本当ですか?
「そうだったんですか?」
本気で言ってるんですか?本気で言ってるんですか?
手、出されましたよ。
「ん?」
「いえ、何でもありません」