やさしくしないで ~なぜか、私。有能な上司に狙われてます~
「急に、なに言いだすんだ?」
驚いたというより、戸惑った顔をしている。
「私も、あなたとこうしていたいんです」
彼の手をつかんで、キャミソールの中に滑り込ませる。
「ああ、もう。君って娘は……」強張った大きな手が、ゆっくりと開いていく。
彼の顔がゆっくり近づいてきて、唇に触れた。
熱を帯びた彼の目が真っ直ぐに私をとらえる。
大きな手が片方の胸を優しく撫でる。

「あの日も、酔った君にそう言われて。理性が吹き飛んでしまった」
「私も、あなたのキスがこんなに心地いいなんて、思わなかった」
「キスなんか、するつもりなかった。まったく、そんなつもりはなかったのに」
「それなのに、どうして?」
彼は意地悪く笑うと、首の回りにゆるく巻き付いていたキャミソールで目隠しをした。
「何するの?」
彼の笑い声が聞こえる。

「お前はいつも、上司なんかあてにするかって言う態度だったろう?
俺のこと頼ろうとせず、向きになってたじゃないか」
唇から、顎に向けて尖った舌先が触れる。
「そんなはずないです」
「明らかに困ってても全然頼ってこないし。機嫌の悪い猫みたいだった。
俺は、遠くから近づいてくるのを待つしかなかったんだ。いくらお前のこと、可愛いと思っても、自分から近づくと逃げてしまうと分かってた」

「課長?」
「今は、課長じゃないだろう?」
耳たぶを柔らかいもので、甘く噛まれた。
思わず声が漏れる。

「そんな部下が、突然、俺のこと好きだって言ってきた。
甘えるようにキスされて我を忘れてしまった。
俺のこと、あんなに避けてたやつが、急に甘えて来るなんて。まったく想定外だったんだ」
ザラっとした感触が首筋を伝っていく。
彼の手が髪の毛をかきあげ、唇を押し当てた。

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