やさしくしないで ~なぜか、私。有能な上司に狙われてます~

「都、ここに越してこればいい。きっと上手くいくさ」
「ん、そのうちにね」
私は、余計なことは、言わすにうなずく。
「そのうちじゃないよ。今、すぐにでも越して来いよ」
私は、顔をあげて課長の目を見た。
いたって真面目な顔をしてる。
今すぐって言うのも本気だ。

「簡単に言ってくれるわね。確か私たち、付き合って間もないはずですけと」
「時間とか、世間体を気にしても仕方がないぞ」
「そうですね」
「あまり乗り気じゃないな」
この人は、適当に流すってことをしない人だ。
仕事では頼りになるんだけど。家で二人きりの時は、そうじゃない方がいい時もある。
「私たちまだ始まったばかりなのよ。そんなに急がないで」
「急いでなんか、いない」
「急いでるわ」

「俺が急いでるんじゃない。君がのんびりしてるんだ」
まったく。私だけのせいなの?
「のんびりですって?私のどこがのんびりしてるの?」
「先のことになると、君はすべて考える頭がなくなった見たいに、動かなくなる」
「そんなことないわ。考えてるのよ」
「いいや、考えてるんじゃない。ためらってるんだ。そうじゃないって言うなら、君の方から説明しろ」
さっと顔つきが厳しくなる。
こういう顔すると、この人は私の有能な上司だと思い出させる。
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