やさしくしないで ~なぜか、私。有能な上司に狙われてます~
「私たち、こうなったって間もないのよ。そんなに急かさないで」
「時間なんか問題じゃない。周りのことなど気にすることはないんだ」
「女性は、こだわるの」
「時間の無駄だ」
私はため息をついた。
「時には、無駄だだって思えることも必要よ」
どうしたらいいんっだろう。この石頭。
「いいや。無駄は、無駄でしかない」
「さっき、お互いを知ることも必要だって言ったわ」
「それなら余計に、一緒に住んだほうが手っ取り早いだろう?」
もう。
真面目なあなたの事だから、つべこべ言うな。
結婚しようってことになってしまう。
そんなに、簡単に決められない。
そんなに一度に環境を変えるなんて。私には無理。
すぐに結論なんか出ないんだもの。

「ほら、やっぱり。何をためらってる」
「私には考える時間が必要なの。
じっくり考えて答えを出したいの」

数日前まで考えたことなかったのだ。
半年前はもっと考えられなかった。

「わかった。来週は、ずっと出張で留守にする。その間考えてるといい」

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