やさしくしないで ~なぜか、私。有能な上司に狙われてます~
「ハンバーグパスタ!」注文を取りに来た店の人に、水口さんが叫んだ。
「ええっ?」ハンバーグのパスタ?
「いえ、ハンバーグとパスタが一枚のプレートに乗ってるって言う意味です」私が戸惑ってるのを見て、付け加えてくれた。
「おいいしいから。それでいいわね?じゃあ、2つ」
水口さんは、にこやかに微笑むお姉さんを追っ払うように言う。
「はい」私はあきらめてメニューを返した。

水口さんは、タイミングを計ったみたいに前のめりになって話しかけた。
「いいこと聞いたんだ。あんた、社内に好きな男がいるんだって?」
神妙な顔で近づいてきたと思ったら、女子高生みたいに目をキラキラさせて言った。
私は、彼女の顔を見て、笑い出しそうになる。

「だったら、どうなんです?」
「好きな男がいるなら。ここはお姉さんが、ひと肌脱ぐしかないでしょう」水口さんの唐突な意見に、私はパスタハンバーグ以上に面食らってしまった。
「いえ、止めてください。そんなの絶対に嫌です」ただでさえ、周囲にバレないように気を使ってるのだ。水口さんにかき回されたら、どうなってしまうのか想像するだけで恐ろしい。
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