10ヶ月経っても遠い君

「12月25日、一緒にお出かけしない?」

「うん、いいよ」


昨日の放課後、勇気を出してデートに誘ったら二つ返事で承諾してくれた。

けど…


「まだ悩んでんの?」

「はるちゃん…」


デートの約束をしたにも関わらず、うじうじしている私にクラスメイトであり親友のはるちゃんがあきれ顔で聞いてくる。


「そんなに悩むなら、さっさと別れちゃえばいいのに。そんなに悩み続けてまで付き合いたい理由がわからないなあ」

「そうだよね…」


はるちゃんは恋愛事にあんまり興味がない。
スラっとしてて顔が整ってるはるちゃんはモテるけど、未だ誰の告白もOKしていない。


「由真が上田、だっけ?を好きなのは伝わるけど、上田が由真を好きなのかわからないじゃん」


そう。付き合い始めてから今月で10ヶ月を迎える今でも、秀くんから好きはおろか、恋人らしいことの1つだってされてない。

もともとクールな性格だった秀くん。
それは付き合ってからも変わらなかった。


クールな人に甘さを求めるのは間違っているのかも、なんて今更思いだした。

もう別れた方がいいかもしれない。
そう考えてしまうことが最近になって増えてきた。


例えば、もともと笑顔の少ない秀くんが男友達と登校しているときに少し笑顔になっているのを見かけたとき。

その日の帰り道では当然のように私に笑顔を見せてくれなかったとき。

学校の中で同じクラスなのに一度も目が合わなあったとき。

帰り道、私が話すのを聞いて相槌をうつだけで何もしゃべらなかったとき。

授業中、先生の雑談が始まって暇になったとき。

思いだしたら止まらない。


別れた方がいいんじゃないかという思考が頭にへばりついて離れない。


「っ、」

「あぁもう由真は~、涙もろいんだから」


今がお昼休みでよかった。
近くに秀くんがいないから。

突然泣き出した私を、はるちゃんは優しく抱きしめて、私が落ち着くまで背中をさすっていてくれた。

< 1 / 8 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop