10ヶ月経っても遠い君

「だんだん寒くなってきたね~」

「そうだな」


帰り道。
コートは着ていないけど、私の首はマフラーでぐるぐる巻き。
脚は寒くなるけど、歩いてれば段々慣れてくるから平気。

そんな私に比べて隣を歩く秀くんは、ワイシャツを第二ボタンまで開けていて学ランを羽織っている。
学ランの前ボタンも第二ボタンまで開いてるし…寒くないの?っていつも思う。


「もう12月だもんね」

「早いよな」


相変わらず秀くんの言葉数は少なくて、どうしても不安な気持ちになる。

昼休みのはるちゃんの優しい体温が恋しくなるくらいには。


「だんだん体育の授業も長ズボンが欲しくなってきたなあ」

「持ってきてねえの?」

「まだ平気かなって思っちゃうんだよね」

「そうか」


こうして話している間にも、秀くんには笑顔がない。

しかも相槌を打つのが下手だから、すぐに会話が終わっちゃう。
まあ、私も話が下手なんだけど…


「そうだ!25日どこいこっか?」

「決めてねえの?」

「一緒に決めようかと思って」

「どこでもいいよ、由真の行きたいところで」


そんなセリフ。優しく微笑んで目を見て言うようなセリフ。

進行方向だけを見つめて口だけ動いて微塵も口角が上がらないカチンコチンの表情筋で言われても。


「そっか、考えておくね」

「決まってら教えてな」

「うん」


いいんだ、そんなの慣れっこだもん。

1か月記念日も、私の誕生日も、6か月記念日も私が言うまで気づかなかった彼だから。

彼の誕生日だって、当然予定を開けてくれているだろうと思ってわざと確認しなかったら、私なんておいて中学の時の友達(しかも男女3人ずつ)と遊園地に遊びに行ってしまった彼だから。


しょうがない。



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