10ヶ月経っても遠い君

迎えた12月25日。

前日、はるちゃんに満面の笑みで送り出してもらった。


「最後にいい思い出作ってきな!」


だって。

はるちゃんも大概ひどい。
でも、そんなまっすぐなはるちゃんが好き。
いつも私を勇気づけてくれる。


「おまたせ!」


待ち合わせ場所にはもう秀くんがいる。それはいつものこと。

約束には絶対に遅れたりしないのが真面目な秀くんらしいなって思う。

私はそんな秀くんを好きになったんだよなあなんてことも思っちゃって。


「行くか」

「うん!」


まだ、付き合っているんだという思いで気分がよくなる単純な自分にあきれつつも先に歩き出した秀くんを軽い足取りで追いかけた。


***


「こ、混んでるねえ…」

「だろうな」


遊園地に着くと、見渡す限り人、人、人!

慌てる私とは違って、混んでいるのが当然だとでも言うように人ごみの中を冷静に歩き続ける秀くん。


「わかってたなら言ってくれれば、行先変えたのに…」


ほんの少しの僻みを混ぜて言うと、秀くんはちらりとこっちを振り返って


「クリスマスなんてどこも混んでるだろうし、何より由真が行きたいみたいだったから。」


ああ、そんなかっこいいこと言ってくれるなら、笑顔の一つさえあってくれればいいのに。

そんな事を思う私はひねくれもの。

秀くんは優しさでこの言葉を言ってくれているのに。


面倒な私に付き合わせちゃってごめんね。

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