私達の初恋には秘密がある
戻ってくると友達に散々茶化されたが上手く交わして、何とかその場はやり抜けた。


次の日の朝いつも通り階段を上がっていると、何だかやたらに周りの人と目が合う気がした。

何だか、やけに学校がいつもと違う気がする。
学校がというか、皆の"目"が。

(なんか、やたらと見られてる? )

不可解に思いながらも階段を登り、教室に向かおうと、角を曲がろうとしたその時。
聞き覚えのある声が聞こえ反射的に隠れてしまった。

(せ、先輩だー····)

「いや、もう本当、·······だよ、ことりちゃん」

(え、私? )

騒がしい周りの雑音で、先輩の声がよく聞こえない。
でも、なんだか嫌な予感がして、私はそのまま息を潜めた。

「なんかさ、好きな人としか付き合わないとか言っちゃって。本当は本命作りたくないだけのくせにさ。俺と付き合うと都合が悪かったんでしょ?」

(え···? どういうこと? )

先輩の昨日とは違う口ぶりと雰囲気に体が固まった。周りに複数人いるのか、他の人の声が聞こえる。

「ねー、先輩と付き合ったら有名になって男取っかえ引っ変え出来なくなっちゃもんね」

予期せぬ言葉に頭が真っ白になったのは、その声も聞き覚えがあったから。

よく知った声。
昨日だって聞いた。
昼休み、体育館の裏に行く前に。
それは、私の友達の美和の声だった。
聞き間違えなんてあるわけない。だって中学に入ってからずっと毎日聞いた友達の声だ。
友達、そう思ってた。

何、なんなの?私の事、笑ってるの?···

なんにも分からないよ。

息が苦しい。

私は咄嗟にその場から逃げ出した。

走って走って走って。
保健室に逃げ込んで、結局そのまま早退した。

きっと、こうやって早退しても本当に心配してくれる人なんて居ないんだろうな。そう思ったら悲しくなって、ケータイも確認しないまま眠りについた。

ベットのシーツに涙の跡を残したまま。

暗闇に飲み込まれるように。

考えるのをやめたくて。
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