私達の初恋には秘密がある
人気の先輩。

とやらがいた。

誰かからそんなことを聞いたことがある。

「あ、ほら、あれあれ!人気の先輩、カッコイイよね〜」

「んー、」

そんな会話をした記憶しかない。
というか、先輩とは話したことも無いはずだけど。

私はこっそりと木の影から先輩を見ていた。

(どうしよう、、、行かないとダメだよね)

ごくりと唾を飲んだ。
緊張で喉がカサカサだった。

この炎天下の中待たせるのなんて、申し訳なくて、私は意を決して、先輩の元まで歩み寄って行った。

「あ、あの・・・」

先輩がこちらを向いた。

「あっ···高坂さん」

無駄に爽やかな笑顔が苦しい。
私は、今から告白されてそれを断らないといけないんだよね。
というか、出来るならそうであって欲しくないんだけど。

「来てくれたんだね」

「は、はい····まさか、先輩からだったなんて思いませんでした。先輩とは話したことも無かったので」

「あはは、ごめんね。でも、俺たち話したことあるんだよ」

いきなりの先輩の発言に驚きを隠せないままだった。
(え、先輩と私が・・・?)

驚きというか、謎というか。
思い出せないというように、首を傾げると、先輩が説明してくれた。

「去年体育祭の時、俺、棒倒しで転んじゃってさ···結構恥ずかしくて、痛かったんだけどその時、1番早くに駆けつけてくれて、手当してくれたのが君だったんだ」

「は、はい」

(そういえば···そんな事もあったような無かったような・・・でも、去年の話でしょ?よく覚えてるな)

正直、自分にはそんな記憶力も皆無で、先輩のことを上手く思い出すことが出来ずに、曖昧な相槌になってしまった。

「それでさ、高坂さんには急かもしれないんだけど······」

(あ、まさかー···)

「高坂さんのことが好きなんだ、返事は急がなくてもいいから少し考えてもらえないかな?」

やっぱり自分の思った通りだった。
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