私達の初恋には秘密がある
先輩と私の間に夏の熱風が通り過ぎた。

木々は揺れ、枝の先についたこれでもかという緑の葉を揺らしている。

目の前には私のことを好きだと言う先輩。

「それじゃあ、考えといて」

そう言って先輩が立ち去ろうとした。

「あ、あのっ!」

先輩が足を止め私の方に向き返った。

「せ、先輩にそう言ってもらえるのは本当に嬉しいし、私には勿体ないぐらいなんですけど···そ、そのごめんなさいっ」

少し掠れた声で、私は先輩に頭を下げた。
(ごめんなさいごめんなさい、これで許してください)

「そっか····振られちゃったか」

ははっと先輩は頭を掻いて、それから俯いた。

「あ、あの本当に····」

「謝んないでいいよ、余計悲しくなっちゃう。だからさ、なんで俺じゃダメなのか教えて? そしたら諦められるかもしれない」

先輩はそっと近づいて俯いていた私の顔を覗き込んだ。

「や、あの····ダメって言うか先輩とあんまり話したことありませんし、よく知らないので。それに、好きな人と意外付き合えません」

最後はもう、投げやりになっていた。
すると先輩は、そっか、ごめんね。とだけ言って呆気なく去っていった。

(はぁー·····。なんか一気に疲れたな)

先輩がいなくなった体育館裏で背伸びをした。

太陽は真上にあって、雲に隠れたり隙間から現れたりを繰り返していたが、それはもう眩しすぎた。背伸びをした手のひらが日光に当たっているのがジリジリと伝わってくる。

申し訳ない、のかな。

こういう時、申し訳ないと思わないといけないのかな。
確かに、告白してくれたのに断るのはそりゃ心が痛むけど。なんにも私の事を知らないのに、一言交わしたぐらいの人が、(しかも去年)私の事を好きだと言うのはおかしな話だと思う。

「結局、顔なのかな〜」

自分が可愛いことは重々承知しているが、何だかそれ以外要らないと言われているようにも聞こえて、なんだか嫌になった。

「もどろ、、、」

先輩がもう完全に居なくなったのを見計らい、私は校舎に戻った。

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