旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです



「わっ!顔ひどい!最悪!」



思わず声をあげると、津ヶ谷さんはふふんと笑う。



「ひとりでワイン空にしたバツだ。マスクせずにそのまま仕事行けよ」

「うぅ……」



最悪だ。確かに自分が悪いんだけどさ。

メイクで隠せるかな、と必死に鏡で目元を見る私に、彼はおかしそうに笑って頭をぽんと撫でた。



「大丈夫だよ。かわいいって」

「……ブサイクでってことですか」

「そうだな」



ひどい!

けど津ヶ谷さんのその笑みは馬鹿にしているようには見えなくて。

彼が言うなら大丈夫なんじゃないかと、妙な安心感を与えた。





……ところが。

案の定というかなんというか、出社した私を見た社員たちは一斉にざわめき出し遠巻きにこちらを見た。



そんな中で女性社員がひとり、意を決したようにたずねた。



「き、桐島さん、その顔どうしたんですか?」

「あー……昨日ちょっと、深酒のうえに夜中まで映画見て号泣しちゃって」



さすがに本当のことは言えず、そんな言い訳で苦笑いをする私に、彼女は驚きながらも頷く。



「えっ、桐島さんもそういうことってあるんですね、意外……」



がっかりされてしまうかも。呆れた目を向けられるかも。

素直になってみたはいいけれど、途端にそんな不安がよぎり、嫌な想像をしてしまう。



けれど、彼女や近くで聞き耳を立てていたのだろう他の女性社員たちから返ってきたのは、おかしそうな笑い声だった。


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