旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです
「ふふ、桐島さんでもそういうことあるんですね。なんか安心しちゃいました」
「うんうん、桐島さんかわいい。あっ、目元の腫れ隠せるファンデありますよ!」
それは、自分が予想していたものとは違う好意的な反応。
完璧な自分じゃなくても、大丈夫。
津ヶ谷さんの言ってくれた通りだった。
私は今まで過去にとらわれすぎて、周りが見えていなかったのかもしれない。
本当の自分と向き合ってくれる人も、きっといるのかもしれない。
そう思うと、安心感がこみあげた。
それから数時間が経ち、お昼休憩の時間を迎えた。
今日は午後から外回りだ。天気もいいし近くの公園で食べて、その足で取引先へ向かおう。
そう思い、荷物を手に建物から出た。
「彩和」
突然呼ばれた名前に振り向くと、そこにいたのは昨日も見かけた彼……元カレだった。
スーツ姿で小さく手を振ると、彼は小走りで近づいてくる。
それに対して私は冷たい視線を向けた。
「……なにか用?」
「えっと……あれ、どうしたんだよ。その顔」
話題を切り出そうとするより先に私の顔が気になったのだろう。不思議そうに私を見る彼に、「関係ないでしょ」と突っぱねた。
「ひどい顔してる。もしかして、泣いてた?やっぱり昨日俺と会ったから?……そっか、まだそんなに俺のこと好きでいてくれたんだな」
「はい?」
「それならやり直そう。彩和の愛に免じて趣味には目をつぶってやる!」